

農薬や除草剤は一切使用していません。今後もそれを変えずに栽培したいと考えています。すべての農薬が悪いとは思っていません。ただ、より安全を考えると極力使用しないことが一番の選択だと感じています。
ただ、日本では「農薬を使わない」ことは何故か批判を受けることなのです。私たちは新規就農にあたり、様々な場所や有機農家さんにお会いしました。そして様々な意見や現状も聞かせてもらいました。その現状に、ある意味驚きもあり、そして寂しくもありました。日本での有機農家はわずか農家全体の約0.6%。この数字がすべてを物語っているのかもしれません。
当農園では有機肥料を使用しています。厳選した肥料(植物性)と、緑肥や細菌(納豆菌など)、籾殻くんたん(米の籾殻を炭にしたもの)などを組み合わせて使っています。化学肥料は一切使用していません。過度の肥料は野菜にも環境にもいいとはおもえませんので、肥料も極力抑えた形で栽培しています。また、水も基本的には農業用水は使用していません。農業用水は、地域や場所にもよりますが、汚染(匂い)やゴミなどが問題になっている場合もあります。
循環を大事にしたい想いもあり、先人たちと同じく、緑肥(麦や草花)や自然草を活用しています。緑肥で撒いている麦は、草を抑制し、風除けにもなります。この地域は風が強い地域ですので、非常に助かります。麦には様々な良い効果があり、畑の中でも、生物が関係し合い存在していることを再認識させられます。
また草を刈り取ったあともそのまま利用し、肥料として使用しております。藁をしいたり、収穫後の漉き込みなど、なるべく循環できるような栽培を心がけています。
自然に完全に影響を与えないことは難しいことです。しかし、なるべく影響や変化を与えないように心がけることはできます。農薬の使用をやめるのもその一つではありますが、草花にも多くの生物が生きています。かれらの場所を奪わないことも自然への考慮だと思います。自然は絶妙なバランスで成り立っています。人間の存在などある意味ちっぽけです。彼らから奪うのではなく、共存すべきだと思います。そして、すべては循環の上の成り立っていることを人は忘れてはならないのだと思います。
言葉にすると簡単ですが、実践するには難しいことも多々あります。様々な方からこれからも学ばさせていただき、想いを形にしていきたいと思っています。
先にも触れたように自然に負荷のない栽培を目指しています。ただそれだけではなく、人にも負荷のない農業をめざしています。人への負荷とは「消費者」と「生産者」両方です。「消費者」には安全であることで体への負荷を減らします。そして、「生産者」にとって負荷のない生産であることも重要だと思います。農業も一つの仕事です。労働環境や労働時間を度外視するなんてもってのほかです。体に良い作物を作る為にも、わたしたちは、自らも豊かに生きる為に、なるべく自身にも負荷をかけない農業を継続していきたいと思っています。そしてその方法を常に模索していきます。
高齢化などによる離農者が加速度的に増えています。歯止めの効かない状況の中で、次の世代がどう農業を事業として成立させていけるかが課題だと感じます。普通の事業と同じで、資金が潤沢な大企業は積極的に新しい技術や機械に投資可能でしょう。しかし、そうでない場合がほとんどです。小さな農家は生き残るだけでも大変な時代がすぐそこにある気がします。これから訪れる深刻な人手不足も、それに拍車をかけることでしょう。
わたしたちのできることはほんの小さなことです。ただ、次の世代につないでいける「魅力」を伝えることも一つの役割と感じています。どうか、野菜の先にいる農家・農業を応援していただければ幸いです。